等伯と永徳


 今朝は起きると空にぽっかりと真ん丸の月が見えました。2月17日は満月になる日でスノームーンと呼ばれるそうです。その名の通り今週末にはまたまた雪予報が出ています。もう少しの辛抱だと思って気長に春を待とうと思います。




 ちょっと長かったのですが「等伯」という小説を読み終えました。以前読んだ「花鳥の夢」と読み比べて見ると著者の時代解釈、人物解釈の違いがわかりとても興味深かったです。ですがどちらの小説にも共通しているのは等伯、永徳がそれぞれの「家」を守ろうと必死に戦う姿が描かれているという点でした。



 永徳が筆頭となって支えていた狩野派は当時一番大きな流派で一大勢力です。重用した織田信長や豊臣秀吉の依頼になんとしてでも答えよう、期待以上のものを描こうとしている永徳の姿は凄まじいものがありました。気に入られなければ首が飛ぶかもしれない(比喩でなく)、一族が滅亡してしまうかもしれないと常にギリギリの状況で作品を描いているのだなと感じました。それを俗的だとか、迎合しているとかとられて苦しむ姿に共感できました。



 等伯はその狩野永徳から刺激を受け、なんとか自分の流派を立ち上げ世間に認めてもらおうと必死でした。能登の染め物屋でしかなかった彼が京で一代をなすには相当な苦労があったようです。そしてそのためになんとか公家に取り入ろうとしている姿がとても人間的でした。その一方で絵師として描きたいものを描かねばならないものを探ろうとする姿も見えました。自分の中にある感情のぶつかり合いが見えて興味深かったです。



 彼らは自分のためというよりも「家」を守り永続させるために絵を描き生きているように思えました。そういう時代だったといえばそれまでですが、今よりもずっと重圧があるなかで作品を作っていたんだと思うと自分を振り返って色々考えさせられてしまいます。今どきそんな人はいないよーと軽く考えるには彼らの作品が素晴らしく洗練されているからです。自由に描くという良さ、不自由のなかで描くという良さ...どちらにもひかれてしまうのです。