岸田劉生のこと

 毎週日曜日にNHK放送している「日曜美術館」という番組があります。毎週ではないけれどやはりチラチラと見る番組のひとつです。今週特集していたのは画家「岸田劉生」でした。近代日本画家の代表で、一般的に娘・麗子を描いた作品が有名です。

 岸田劉生の生涯や作品解説的なことは私よりも知っている方々はたくさんいらっしゃるから書きませんが、彼の作品について私が思っていることは書いても良いのかなあと思いました。私が初めて彼の作品を観たのはたぶん小学校の図画工作の教科書だと思います(もしかしたら国語の教科書?)。麗子像でした。初期の油絵作品ではなく水彩画でさっと描いたもので、なんだか不気味な子供の絵だなあ~と思ったものです。

 と、同時にとても古くさい作品だと思いました。着物もやぼったいし、おかっぱもヘンテコで同じ時代に生き劉生の師でもあった黒田清輝の優雅な作品とは大違いでした。

 中学生になって、自分が絵を描くのが好きだと気づいても一向に劉生には目を向けませんでした。好きだったのはマネやボナール、ビーヤール、ミュシャも好きだったなあ~。教科書でしか絵に触れていなかったせいでしょうか?当時の美術教育に近代の日本美術はあまり出て来ませんでした。

 高校生の時初めて東京国立近代美術館に行きました。竹橋にドンとそびえる美術館で名前の通り日本の近代画家の作品を収集保管展示しています。そこで見たのが劉生の「道路と土手と塀(切通之写生)」でした。そんなに大きな絵ではないけれど印象的な空、空気が抜けていくような空ではなくまるでこちらにのしかかってくるような強い空です。ジョアン・ミロの初期の作品をイメージしました。

 劉生は38歳で亡くなりました。晩年には油絵と平行して日本画もたしなんだ人です。彼には色々な作品があります。麗子像、リンゴの静物画、その他人物画、自画像に風景画に日本画...ですが私の中で劉生はやはりこの「道路と土手と塀(切通之写生)」です。