現代、今ということ

 私に作品は、どちらかというと流行に乗っているものではない様子です。現代絵画と言われて一般の方、また美術に携わっている方が思い浮かべるものとは違うようです。
 確かに、所々の現代美術館に展示されている作品を見ると、皆さんの言っていることがよくわかります。カンデンスキーを皮切りに抽象絵画。ポロックのアクションペインティング。インスタレーション、ハプニング…。そして日本の漫画文化を引用した作品などなど。本当にアートの世界は大きくなり、様々な表現が台頭してきました。より自由度が増して可能性が広がっているんだなあと思います。

 ふりかえって。私は、古典的な油彩技法で、昔から変わらない自然を描いています。森や林、蝶やてんとう虫…きっといままで誰かが描き、名作も多いものを描いています。現代絵画の流れとは違うのかなあと一時悩むこともありました。

 そのことを、一度相談したこともありました。その時相手に言われてハッとし、心に留めていることがあります。「同じものでも今を生きているあなたが感じて描いたものと、昔の人が感じて描いたものは全く違う。」「同じ時代を生きていても、あなたとあなた以外の人が描いたものは全く違う。」ということです。

  現代・古典とかいう考えも一種、私たちが作ったカテゴリーでしかないということに気づかされた瞬間でした。アートは自由なはずなのに、自らで縛りをかけていたのかなあと感じました。

前にここで書いたように、同時代を生きた葛飾北斎と小野田直武の作品は全然違います。しかし自分がよいと思った方法で今を捉えて行こうとしていたのでしょう。そこに私は感動し、作品を良いと思うのです。自分を信じて、良いと思う作品を多く作っていきたいと思います。
※写真はジャクソンポロック「ナンバー1」